歯科技工士/早川純です。
先日、色の再現に関しての記事を投稿しましたが続きでシェードガイドと呼ばれる色見本のお話をしていきます。
歯科医院にて写真を撮る際に上の様なシェードガイドを見たことがある患者様もいらっしゃると思います。
この見本と患者様の歯の色を比較し、製作していく歯の色を決めていくのですが色を伝えるということは非常に難しいことです。
例えば、A1より白くとかB2より黄色が強いとかC1より暗いといった曖昧な表現で製作依頼があることも多いのが現状です。
色の基準には【明度】=明るさ【彩度】=色の濃さ【色相】=色の種類といった基準があります。
歯の色の再現をより複雑にするのは、上の3つの要素に加えて【透明度:Transparency】や【不透明度:Opacity】の概念が加わるからです。
次の写真は、左から順番に明るいとされている色に並び替えたガイドです。
見やすい様に、モノクロに変換してあります。
均一な明るさになる様、高演色LED照明で上下から挟み込む様に撮影しています。
皆さんの目にはどうみえますか?左から順番に明るくなっているでしょうか?
自分には左から順番に明るくなっている様には全く見えません。
左から明るくなったり、暗くなったりを繰り返してグラデーションになっていません。
例えばB1は、色の濃さが薄く白い歯として評価されていますが同時に透明感が上がり厚みによっては暗くなりがちです。
上の色付きの写真で見ても、B1は色が薄いが暗くなっているのがわかります。
これには、先ほどお話しした【透明度】【不透明度】が関係しています。
上の写真は、セラミック陶材の明るさ比較のために均一な厚みに焼き上げたものです。
ボディ陶材とは、セラミックの被せ物の核となる陶材になります。
シェードガイドでお話したように、ボディ陶材のB1はA1と比較して暗くなっていることがよくわかると思います。
これは、B1の透明度が高く光の反射率が低いためだと考えられます。
こういった知識を患者さんの口腔内撮影者と技工製作者が理解できていないと色が合うことはないでしょう。
歯科医療従事者同士の伝言ゲームになってしまっては正しい色が伝わることは考えられません。
色合わせには、高度な専門知識が必要不可欠です。
加えて、手作業で適正な部位にセラミックを焼き付けていく必要があります。
色を合わせるために作業できる厚みは、約1ミリ前後しかありません。
歯科治療は内容によって、人生をより良く変えていくこともできますし、上手くいかなければその逆の可能性も大きいです。
学校で講師を務める時に学生には、職人の最高峰だと思って学んで技術を高めて欲しいと伝えています。
知識だけでも技術だけでも人生をより良くする歯は、製作出来ないと考えています。
長くなり、少し偉そうな話にもなってしまいましたが、少しでも歯科治療を知っていただき、信頼できる歯科医療従事者と巡り合っていただけたら幸いです。
株式会社Dental Blue Ocean早川丸 歯科技工士/早川純